診療科・部門の紹介
前回は女性と歯周病の関わりについてお話しました。
今回は、更に妊娠期の口腔内(お口の中)についてお話しましょう。
よくちまたで「妊娠してから歯が悪くなった。」「子供にカルシウムをとられたから、歯が脆くなり悪くなった。」ということを耳にします。これには、少し間違ったところがあり、整理する必要があります。
妊娠期に歯や歯ぐきが悪くなる原因としては、
①つわり(妊娠悪阻)により歯磨きが上手くできないことによる口腔清掃状態の悪化
②唾液の酸性化
③女性ホルモンの増加に伴う歯周病菌の増加(前回掲載)
④食事や間食回数の増加による歯垢(口腔内細菌)の増加
⑤歯が虫歯菌にさらされる時間の延長
などが挙げられます。
つまり、歯が悪くなるのは、歯や歯周組織からミネラル(カルシウム 等)が胎児に移行するのではなく、お口の中の衛生環境が極端に悪化するためによるものなのです。歯が悪くなるのは、お腹に子供がいるためという誤った認識は改める必要がありそうです。
妊娠中の方は、全身的にもつらい時期かもしれませんが、歯の病気は(細菌)感染症ということもあり、生まれてくる子供のためにも、できるだけ口腔清掃に努めてください。
最後に、妊娠期の歯科治療の時期についてお話します。妊婦は早期に歯科検診を受け、簡単な治療は早めに済ませるようにし、複雑な治療が必要な場合は、妊娠4~7ヶ月の時期(安定期)に行うのがよいと考えます。また、親知らずの周囲が腫れた経験があったり、顎関節症(顎が痛くなる症状)などのようにお口の周りに異常を感じておられる方は、妊娠前に相談または治療を受けることをお勧めします。